生き残るための食糧
私の名前はジョニア・レイテ・ソアレスです。
2016年、私はトリノで開催されたテラマドレのイベントに招待され、その時、世界中の小規模な食品生産者が集まリ、互いにつながり合う姿を見て、ものすごく刺激を受けました。先住民の代表者たちが、誇リと情熱を持って自分たちの製品を紹介し、そのストーリーを共有しているのを目の当たりにして、私は驚きを隠せませんでした。
ここで受けたインスピレーションはとてもパワフルで、「私たちは皆、より良い世界をつくるために貢献することができる。」「それは私たちが行動を起こした瞬間から始まる。」と信じさせてくれるものでした。そこで私は、2022年3月に伝統食の保存と普及のためのプロジェクトを立ち上げました。その目的は、地元の食材に関する知識を持つナライ・コミュニティと若者を、そして他のスローフード・コミュニティをつなぐこと。それからコミュニティの人々が知識を保存し共有する、特に若い世代に伝えるために必要な支援体制を作り提供することです。ナライ・コミュニティがあるラレイアは、東ティモールの首都の東に位置するマナトゥート市にある小さな町です。この町は、お米、サゴ、タマリンド(ほとんどのレシピに使われる有名なスパイス)、トウモロコシなどの季節の農作物で知られています。
これらの作物を使った、ユニークなレシピが開発され、食卓を飾ってきました。しかし、残念なことに、多くのレシピは次第に忘れ去られるようになりました。多くの若者が教育や仕事のより良い機会を求めて都会に移リ住む一方で、レシピはほとんど年長者によって調理されてきたことで、このようなギャップが生まれてしまっています。
私にとって、食べ物は空腹を満たすだけのものではありません。私たちの食べ物は、私たちのアイデンテイティーの形成に貢献し、私たちを他の人とは違うユニークな存在にしてくれる、明確なストーリーを持っているのです。ですから、私たちの食べ物にまつわるストーリーを明らかにすることで、私たちのアイデンティティに対する誇りの感覚を取り戻すよう、コミュニティを支援していくことは非常に重要なのです。これは、生物多様性を維持し、食料の主権を回復するためのプロセスとも言えます。私たちのアイデンティティと伝統食に対する十分な自信を持つことができれば、私たちは特産品をさらに開発し、地域の生計を向上させることもできるようになるでしょう。幸いなことに、私にはラレイアに「ローカルコミュニティを支援し、歴史に富んだ伝統食を守り発信していく。」という同じビジョンを持つパートナーがいます。
東ティモールの伝統料理には、とうもろこしを主な材料としたさまざまな調理法があリます。そのシンプルさにもかかわらず、私たちがこのレシピを紹介することにしたのは、とうもろこしの粉が、長い乾季を生き抜く東ティモールのコミュニティを支えるユニークな役割を果たしてきたからです。そしてまた、人々が長く苦しんだ戦時中、ジャングルでゲリラの自由戦士を支える重要な役割を果たしていたからです。さらには、とうもろこしの粉は、はちみつや牛乳、熟れたバナナやカボチャなど、好みに応じてさまざまな食材と混ぜて食べることができます。それはまるで、人が生きていくための調整能力のような柔軟性を持っていると言えます。だから、私たちにとって、これはサバイバル、レジスタンス、そして最も重要な意味を持つー自由ーの味なのだと思うのです。
ジョニア・レイテ・ソアレス
コミュニティリーダーオークランド工業大学院生
ビジネスメンターツーリズムコーディネーター